2023年11月24日

動物園・水族館の飼育員さんに聞いてみた! - どうやって飼育員さんになったの? - アドベンチャーワールド佐野さん

現役飼育員に取材協力をいただき、現場で働く人の内側に秘めた想いを赤裸々にお届けする本企画。

今回は、和歌山県にあるテーマパーク、アドベンチャーワールドのエンジョイ課で犬の飼育員として勤務する佐野さんにインタビュー。

現役飼育員が語る犬の魅力とその働き方に迫りました。

佐野 さのさん
Profile

大阪府出身。大阪国際大学グローバルビジネス学部卒業後、株式会社アワーズに入社。運営部エンジョイ課に配属となり、犬の飼育に携わる。現在はチームリーダーとして活躍し、今年5年目を迎える。(2023年11月現在)

やってみないと分からないからこそ魅力に感じた、ジョブローテーション制度

テーマパークや動物園に興味があり、就職活動をする中で、株式会社アワーズでは、ジョブローテーション制度を採用しているといった点が魅力的に感じ、入社を決めました。

大学を卒業して就職するにしても、どんな仕事が自分に合っているのか実際に働いてみないとわからないと不安に思っていたぼくにとって、広報や営業、飼育などたくさんの業種選択ができることは、いろんなことにチャレンジできるのでワクワクしました。

またもともと動物が好きだったということもあり、動物に携われる可能性があることも決め手の一つになりました。

入社が決まり、配属先がエンジョイ課と知らされた後、遊園地の業務か犬の飼育業務か選択肢を与えてもらった時に、動物の飼育に挑戦してみたい気持ちの方が強かったので、犬の飼育員になりました。

犬の飼育担当に配属していただいてから5年が経過し、現在チームリーダーを努めています。

新しい技に挑戦するためのトレーニングは個体ごとに担当を分けていますが、基本的には、11種15頭の犬をスタッフ全員で真摯に向き合い、飼育することを心掛けています。

犬と最高のパートナーになるために

人間にも共通する部分があると思うのですが、過ごした時間が長い人に対して、信頼が芽生えたり、パートナーとして認識したりすることがあるのではないでしょうか。

なので、犬の飼育に携わるようになって以来、犬たちと良きパートナーになれるよう、一緒にお散歩に行ったり、トレーニングをしたり、たくさん遊んだりして、信頼関係を深めてきました。

これからも犬たちにとって最高のパートナーでいられるように、1頭1頭としっかりコミュニケーションを取って、楽しく過ごしていきたいです。

犬の飼育員、1日の仕事内容

朝はみんな(犬)に挨拶をして、怪我やウンチの状態など基本的な健康チェックを行います。また朝トイレをするようにトレーニングしている個体もいるので、排泄をするために外に出します。

わんわんガーデンでは、子犬から老犬、小型犬、大型犬などさまざまな種類と年齢の犬たちが生活していますので、はじめにトイレやごはんを食べることが難しくなっている老犬たちのお世話を行い、一歳までの元気な子犬たちには、広場でたくさん遊んでもらいます。

大型犬は散歩に行くので、小型犬のごはんを与える人を分けて行います。大型犬は散歩が終わってからごはんをあげて、みんなが食べ終わったら、わんわんガーデンに移動します。

毎日ではないですが、朝の時間にシャンプーをする時もありますよ。

ぼくの場合は、11時から30分のお昼休憩を挟んで、12時からのアニマルアクションに備えます。土日の場合は、アニマルカーニバルもあるので、そのアトラクションにも参加し、その後に残りの休憩30分をとります。

お昼休憩後は、わんわんフレンズでMCをして、2回目のアニマルアクションまで時間がある時はデスクワークもします。

アトラクションが一通り終わったら、アトラクションに出ていない子たちのトレーニングをして、夕方に犬舎に戻ります。

犬舎に戻ってからは、近くの芝生エリアで遊ぶ子、大型犬のお散歩、犬たちの寝床作り、ごはん、歯磨き、ブラッシングなどを分担して行い、夕方17時30分に終業です。

犬はかわいい!

犬の成長を見ることができたり、人間にとって身近な動物の魅力を発信できる立場にいることで、動物に対する興味を持ってもらったり、動物を好きになってもらえる機会を作れることが楽しいです。

とはいえ、動物を好きになってほしいというのは、犬が大好きなぼくのエゴのような気もしているので、強要にならないように伝え方は意識しています。

ぼくは犬の魅力をたくさん知っているので、それを飼育員がゲストに伝えることで、動物について考えたり、何かを感じたりと、心が動くようなきっかけになれる可能性のある仕事だというのも誇りに思っています。

あとはやっぱり、犬がかわいいです。(笑)
犬は感情が豊かなので、ぼくが犬たちにできることがあるならしてあげたいなといつも思います。

今が最善、そして未来へ

ぼく自身、この仕事を大変だと捉えてはいないので、あまり思いつかないのですが、辛いことといえば、犬が亡くなった時ですね。
これは飼育員をしている以上、切っても切り離せないことだと思います。

先ほどの話と重なるのですが、犬は感情豊かなので楽しい時は本当に楽しい表情をしますし、辛い時は辛そうな顔をします。

もちろんできる限りのケアはしますが、亡くなってしまう時は、周りから泣き虫と言われるほど号泣してしまいます。

死を迎えることは本当に辛いですが、亡くなった子たちの分まで、今生きている子たちを幸せにしようと強く思わせてくれるので、また前を向いて頑張ることができます。

飼育員だからというわけではないと思うのですが、常に今が一番幸せだなと思っています。

辛いことがあっても、今があるから良い未来が開けると思うので、どんな経験も自分の糧にしていきたいと考えています。

犬だからこそ一緒にできる介在教育を全国へ

これまでにチャレンジしてみたいことは挑戦させてもらってきたんですけど、まだまだやってみたいことはあります。

パフォーマンスの観点では、フリスビーをもっとレベルの高いものに仕上げてみたいなと思っています。

挑戦で言えば、アドベンチャーワールドだけでなく外部で犬の魅力を発信できるような取り組みをしたいなと考えています。

動物を介した教育に興味があるので、ただ犬とのふれあいの機会を設けるのではなく、犬の飼育員として働いているぼくだからこそ発信できる正しい犬とのふれあい方を、まずは学生を対象に教育という要素を取り入れて伝えられる機会を作りたいなと思っています。

犬は他の動物と違い、移動ができるので、その点を生かしてアドベンチャーワールドという限られた環境ではなく、日本全国を対象に犬の魅力を発信できる場を増やしたいです。

読者の方へ

犬は覚える動物なので、たくさん来ていただければ、仲良くなれます!(笑)
これは他の動物だと難しいと思うので、犬だからこその魅力ですね。

あとはライブですね。
アドベンチャーワールドを訪れた際には、アニマルアクションなどの会場に立ち寄ってほしいなと思います。

各アトラクションでテーマが違うのですが、犬の種類や個体によって走り方や吠え方など違う魅力があるので、ライブに出演する個体が持っている能力や特徴を引き出せるような種目作りを心がけています。

たとえば、ビーグルの場合は狩猟犬なので、穴の中に隠してある骨を見つけ、それを咥えてゲストの前を走るだったり、ラブラドールレトレーバーの場合は、扉を開けるだったり、紐を引っ張って鐘を鳴らすだったり、介護犬として人間の力になってくれる犬種であることをゲストにわかりやすく伝えられるように工夫しています。

難しいですね。(笑)

ぼくの考えで言うと、自分のやりたいことを口に出して行動することが一番の近道かなと思います。

行動している時に、気づけることもあると思うので、失敗を失敗ではなく糧にしていければ、未来は自然と開けてくるのかなと考えています。

WRITER PROFILE

Matsuda Natsuki まつだ なつき

ドルフィントレーナー専門学校を卒業後、ダイビングインストラクターや船舶の仕事に関わる。全国の水族館や動物園だけでなく、野生の生き物に会いに行くのも趣味。「地球に生まれた全ての生き物が、HAPPYで愛あふれる未来に生きたい」と願い文字を綴る。