2023年01月25日

動物好きなら飼育員になれる?飼育員で大切な考え方を聞いてみた!- AWS(アワーズ)動物学院事務局 武分さん -

「飼育員って何しているの?」「どうやってなる?」そんな動物園・水族館にまつわる疑問にお答えするための本インタビュー。
今回は和歌山県にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」を運営するアワーズ株式会社のグループ、AWS(アワーズ)動物学院に勤める武分さんにお話を聞きました。
飼育員を育てるべく講師をされている武分さんが話す、飼育員の魅力や、飼育員についての考え方に注目です!

武分 渉(たけわき わたる)

Profile広島県出身。アワーズ(※)入社。サファリワールドでライオンの飼育担当を経て、2020年よりアワーズシステム株式会社へ異動。現在はAWS(アワーズ)動物学院で学院生のサポートや、実習授業での講師などを務める。
(※)アドベンチャーワールド

学院生の「やりたい」を実現させるためにサポートしている

ーー現在お勤めのAWS動物学院ではどのようなお仕事をされているのでしょうか?

朝は学院生の登校・出欠確認をして、受け持ちの授業がない時間帯は大体事務作業をしています。学生の宿題や提出レポートのチェックなどですね。そのほか、入学・卒業関連の手続きなど、学院生に関わる様々な事務を行います。
また、授業がある時はその準備や企画・外部との調整などを行います。

ーー日々の学生対応や、授業、手続き事務まで、やっていることが幅広いですね!

そうですね、生活の面なども含めて基本は学院生についてなんでもします。
学院生のほとんどは遠方から来ているので、多くが学生寮のような住まいで下宿をしているんです。
基本は干渉しないですが、どうしても大人の手を借りないと無理だなという時、例えば、病院へ行くなどの車が必要な場面では運転をしたりもしますよ。

ーー授業はどのようなことを学べるのでしょうか?

私が担当するのは「動物ガイド」といい、教育普及のための授業になります。
飼育とはいえ、説明の場面は求められますし、ほとんどの飼育員が話せますので、動物の魅力を伝えるためにはどのような方法だと良いか考えたり、ガイドを学ぶといった体験学習をします。

最近ではコロナ禍により増えつつあるオンラインでのレクチャーを練習したり、SNSの発信について学んだりしていますよ。

学習内容も学院生が「やりたい!」という意見をもとに、年間3テーマ分、学院生自身が企画・運営まで行います。授業構成なんかも本人たちに考えてもらったりするんです。
学院生からは「お客さんを前にガイドをしたい!」という熱心な意見も出てきます。私はその声を実現させるための企画や準備まで学院生自身が考えられるようにアシストしたり、学院生のできない現場の方との調整などをカバーするよう動いています。

ーー自主性のある授業で楽しそうですね!

2年という短い在籍期間で、皆さん日々成長されるんですね。最終的に就職が決まったり、動物のトレーニングが成功したり、という報告を聞くと、すごく嬉しいです。
この仕事をしていてよかったなと思う瞬間です。

飼うよりも「観察」が好きな少年が目指した飼育員

ーー武分さんは幼い頃から動物が好きだったのですか?

小さな頃から図鑑ばかり見ていましたね。動物園でもじーっと眺めるのがすごく好きでした。

自宅では犬を飼っていたのですが、当時はそこまでお世話をしたいという気持ちはなかったんです。中学生になると、自宅から自転車で行ける距離に動物園があって、そこは土曜日に学生が無料だったので、通い詰めて観察していたことを覚えています。

ーーとても良い環境ですね。中学生の時から将来的に動物に携わるお仕事をしたいと思われていたのでしょうか?

そうですね。ただ、勉強は嫌いでした(笑)動物に携わる職業もあまり知りませんでしたし、動物を特集するテレビ番組で「あんなことしたいなぁ」と見ていたぐらいです。

高校時代も普通科だったので特別何かを勉強したわけではないのですが、いざ進路を考えるとなった時、父親が出張先でたまたまAWS動物学院の広告を見つけて教えてくれ、私自身もAWS動物学院で学びました。

ーーそこからアドベンチャーワールドへ就職し、飼育員へとなったという流れなんですね。

はい、以前はサファリ担当として、飼育員をしていました。
部署異動したのは現職の一回だけで、それまでは10年以上サファリ課に所属していました。もう、ずーっと楽しかったんです。

ーーそれは動物の中でも特にサファリ系の種がお好きだったからですか?

いえ、私自身は微生物や虫も含めて動物全般が好きなんですよ。だからどんな動物の飼育でも嬉しかったのですが、担当した動物がやっぱりかわいく思えてきますよね!

余談ですが、自分の性格上、行った先でやりたいことを見つけられるタイプなので、動物飼育も楽しかったですし、今は今で、AWS動物学院のお仕事を楽しんでいます。

実際に飼育員になったら楽しくて仕方なかった

ーー武分さんのその表情から飼育員時代の楽しさをとても感じられますが、飼育員のお仕事の魅力って何だったのでしょうか?

魅力は山程あるのですが、やはり毎日動物を見ていられるということです。
先ほどお話したとおり、特に私にとってはずーっと見ていられるという点が何よりも魅力でした。
「なんでこんな形状をしてるんだろう?」と考えながら見ていると本当に楽しいんです。

例えば、ライオンなんかは爪が仕舞えたりするのですが、「なんで?どういう構造で爪仕舞ってんの?」って考えたり、草食動物を見ていると「草だけでどうしてこんなに体力を維持できるの?」なんて疑問が浮かぶんですよね。

ーー言われてみたら確かに不思議ですね!

あとは、「この動物は何を考えてるんだろう?」「なぜこんな行動を取るんだろう?」ということをじっと考えて見ていましたね。群れでいる時に個体同士が絡んでいたら「これは喜んでいるのかなぁ?それとも嫌がっているのかなぁ?」なんて。

肉食動物担当の時の仕事はほぼ毎日が監視ジープでの動物の誘導、監視でした。動物の動きから「今あの動きをしているなら闘争するだろう」と推測し、事前に闘争を防ぐことができます。
そんなことを考えながらじっと見ていることが本当に楽しかったですね。

ーーめちゃくちゃ楽しんでいますね(笑)じっと観察する時間を持てるというのは、飼育員さんならではの特権かもしれませんね。

動物好きの方であればたまらないんじゃないかなと思います。

ーー逆に飼育員をされる中で一番大変だったことは何ですか?

やはり動物も寿命があるので、高齢になると世話でやることも多くなり大変になってきますね。何より、生命の維持を手伝う中で、弱っていく姿を見るのは辛かったです。

あとは、広大な土地を草刈りや溝の掃除などは体力的に大変でした。サファリならではの特殊な設備や車の知識も必要になるので、飼育以外に勉強も必要ですしね。

「動物のことを考えられる人」を増やしたい思いが強くなる

ーーとても充実した飼育員時代でしたが、長年サファリでの飼育担当をされていて教育普及の面にもご興味が出られたそうですね。

はい、飼育に携わっていくなかで、動物について知識を持ったり、動物のことを考えることができる人をもっと増やしたいなという考え方が出てきました。

ーー何かきっかけがあったのでしょうか?

日本動物園水族館教育研究会」という、動物園や水族館の教育普及に関する研究会があるのですが、何回か参加して色々な方のお話を聞いているうちに興味が出てきました。

そこで、各地の動物園の事例を聞いていると、世の中状況や動物に対する意識が、自分の子ども時代よりも大きく変わってきているとわかりました。
例えば、海洋プラスチックなど環境問題によって動物が苦しんでいる問題や、利益を優先するあまり野生動物を乱獲して日本で売られている現状とそれを望む買い手、絶滅危惧種の問題などですね。

同時に、日々の仕事でお客様へガイドをするために勉強をしていると、自分自身が担当する動物の野生環境についても知識を得ていきます。
ここで得た知識をガイドとして喋るだけでなく、何か行動に移していけないだろうかと思うようになりました。

私たちは”伝えること”しかできませんが、それでも普及をしていけば、誰かが行動に起こすきっかけを作れるかもしれませんよね。
野生動物や野生環境に良い影響が与えられる選択をする人は私たちでも増やせるのではないかと思ったんです。

ーー動物も人間も地球上に生きる生物として、共存していくといったところでしょうか。

結局のところ動物がいなくなってしまうと、 全部人間に返ってきてしまうんですよね。
「動物のために!」とまではいかなくとも自分たちを守るという目的でも良いので、「周り回って人間が結局悪影響を被るんだよ」という伝え方をするようにしています。

ーー地道なことですが、そもそもきっかけがないと始まりませんよね。とても大事なことをされていると思います。今後の展望などはいかがですか?

やっぱり、動物のために考えたり行動したりできる人を少しでも増やしたいですね。
そのためにまずはこれからの若い世代が担当した動物たちが幸せになれるよう、学院生にも伝えていきたいなと。

また、社内でも動物の魅力を広げようという目的のサークルがあったりするので、動物に直接触れたり知識を得る機会が少ない他の部署の方に向けても知識を深めるきっかけを作っていけたらなと思っています。

大切なのは「自分の持っている経験×飼育」で考えること

ーー最後に、これから飼育員を目指していたり、動物園に転職したいと考える皆さんにむけて、大切な考え方などはありますか?

「この動物を飼育したい」と絞って考えないことでしょうか。

現場で起こることが、学校などで勉強したことよりも大きく超えてくるからです。担当する動物によっても知らないことがたくさん出てきます。
ですから、現場に入って改めて学ぶ気持ちはとても大切になってくると思います。

そして、今ご自身がお持ちの経験と、飼育の業務の”掛け算”で考えるようにしてもらえたらなと思います。
例えば、美術系の知識・経験を持っている場合、「飼育の経験がないから目指せない」となるのではなくて、美術系で学んだ技術は展示パネルなどの見せ方に活かすことだってできると思います。

ーー確かに!掛け合わせで逆に良い影響が生まれますね。

自分らしい飼育を生み出す大切な考え方になると思います。
どんな分野とも繋がりやすいのが動物飼育の業界の魅力です。ご自身の持つ経験をいかに飼育へ反映させることができるのか、どうしたら自分の持つ武器を飼育で活用できるのか、というところはおそらく1番のポイントになると思いますし、ここを考えられたらとても良い飼育につながるのではないでしょうか。

ーー経験のない分野・業界に行こうと思うと「もう一度ゼロから勉強し直さなきゃ」という気持ちにどうしてもなりがちですが、ご自身の経験値が大切なのですね。
武分さん、ありがとうございました!


動物の飼育は、観察する楽しさがあったり、野生環境を知ることでさらに深く動物のことを見つめることができます。直接動物と触れ合うだけではない大切なことを学んだように思います。
飼育の仕事などにご興味のある方は、一度AWS(アワーズ)動物学院にお問い合わせしてみてはいかがでしょうか?

WRITER PROFILE

Miyauchi Megumi うっちー

フリーランスとして活動するデザイナー&ライター。
無類の動物好き。動物アテレコをすると世界が優しくなるはずだと考え、SNSで発信している。将来の目標は、犬と並んで縁側に座りコーヒーを飲む毎日を送ること。